島田市 ふるさとレポ部

静岡県島田市のヒトやモノをご紹介します。

サカイ産業株式会社


― 夢をもった大人でいたい ―


簡単なようで難しいテーマです。
私もこんな気持ちを抱えつつ、仕事や生活の中で、ふと現実的なことばかり考えてしまいます。

今回は、このテーマに挑み続ける島田のヒトを取材してきました!


やってきたのは、静岡県島田市に本社を構えるサカイ産業株式会社。
サカイ産業株式会社

大正7年創業。以来、ガラス繊維や炭素繊維をはじめとする新素材の製織技術をいち早く確立させ、産業用繊維資材のパイオニアとして未知なる世界への最前線を切り拓いてきた凄い会社が、ここ島田にあるのです。

そんなサカイ産業株式会社で新プロジェクトが立ち上がったのは2015年のこと。
同社社長である酒井社長の「ゴルフバックが欲しい」という何気ない一言からすべては始まりました。
そこで矢面に立ったのが、中川裕孝さん。当時勤続34年目、サカイ産業一筋のバリバリのアイデアマンです。

サカイ産業株式会社
開発責任者の中川さん

中川さんはこのプロジェクトを任されたとき、「我社最大の強みである炭素繊維を使って、今までに無いゴルフバックを作ろう」と閃いたそうです。

航空・宇宙などの最先端の分野でも使用される炭素繊維。他に類を見ない質感と強度と軽さ。
こんなゴルフバックがあったら絶対に面白いはず!

とはいえ、物事は簡単ではありませんでした。

中川さん「ようやくバック制作を引き受けてくれる工場が見つかりましたが、やはり炭素繊維は特殊な素材です。全く伸縮しないですから。だけど使いやすさも追及したい。その為には細部にまで工夫をする必要がありました。」

従来の繊維であれば、気を遣わなくても良い部分にも、一つひとつ入念なチェックをしながら、バック作りを進めていきました。

島田市の新ビジネス応援事業補助金が交付決定されたのもこの時期。
「これは嬉しかった」と中川さんは語ります。
中川さん「お金の部分ももちろんだけど、市が後押しをしてくれるというのは、こちらとしても本当に心強かった。」

その後、何回もの試作を経て、ようやくゴルフバックが完成しました。
サカイ産業株式会社 サカイ産業株式会社
炭素繊維の唯一無二の手触りと光沢、こんなゴルフバック見たことがない!


また、ブランド名を会社で公募し「sansaQua(サンサカ)」に決定!
これは、同社の経営理念である山茶花(サザンカ)の花に由来しています。
山茶花は冬の寒さ厳しい時期にこそ、力強く美しい花を咲かせるのです。
サカイ産業株式会社 サカイ産業株式会社
由来を説明する中川さん        sansaQuaロゴマークにも山茶花の花

今までにないゴルフバックが出来た!
その噂は瞬く間に広がり、話題沸騰!
新聞、テレビ、雑誌など多くのメディアから取材オファーが来ました。

さて、そんな中、中川さんはまた頭を抱えてしまいます。

中川さん「今まで対企業に対してのアプローチばかりしてきたからね。物は出来たけど、それを個人に対してどう売るか?どう広報をすれば良いのか?それが全くわからなかったよ。」

そこで次なる一手として、広報担当を置くことに!
そんな時、当時経理専門で仕事をされていた杉本真理さんを抜擢!
女性ならではの発想や、柔軟さで「sansaQua」を盛り上げてくれる人が必要でした。
サカイ産業株式会社 サカイ産業株式会社
広報担当の杉本さん

杉本さん自身もこの話が来たとき、「普段事務仕事ばかりで、名刺の渡し方もわからないのに、広報と言われても何をどうしたら良いのか・・」と困惑されたそう。

てもそこは持ち前のチャレンジ精神で、次々に広報担当としてメディアの取材対応をこなしていきました。
サカイ産業株式会社
この他にも多数のメディアに取り上げられました。


また東京のバック展示会に単独突入をして、表参道の株式会社SACさんに営業をかけ、ゴルフバック以外の商品製造が可能に!杉本さんの営業力、恐るべしです。


杉本さん「縫製会社さんも新しい素材を探していて、炭素繊維やガラス繊維が持つ独自の個性に興味を持ってくれました。SACさんとの出会 いによって、ボストンバックやリュックなど、幅広い商品を作ることができるようになりました。」

サカイ産業株式会社
ガラス繊維を使用して作られたボストンバック

サカイ産業株式会社
ガラス繊維が太陽の光を受けてキラキラと輝きます!

現在では広報・開発担当として全国のバックメーカーと直接交渉したり、女性ならではのきめ細やかなアイデアで新商品開発に携われています。
サカイ産業株式会社   サカイ産業株式会社
バックメーカーさんとの打ち合わせの様子  ブランドPR動画にも出演!


中川さんと杉本さんはこれまでの3年間を振り返って語ります。

中川さん
「このプロジェクトを始めてから、ずっと手探りで進んできましたが、本当に色んな人に助けられました。困った事が起きると、誰かが助けてくれるんです。だから私も常に誠意を持って本音で話すようにしています。あとは絶対に裏切らないこと。笑」

杉本さん
「この仕事に関わるようになって、人生が変わっていきました。最初は不安でしたが、誰もやった事がないことをやるのはある意味で失敗はないということですよね。失敗も成功の途中かもしれない。あと、外に出るって楽しいですね。笑」



今回、私がお二人にお話を伺って気付いたことは苦労をされたお話のはずなのに、とても楽しそうに見えるということです。それは、お二人がsansaQuaのキャッチコピーのように、夢を追いかけているからなのだと思いました。
誰もがやったことのない事に挑戦する。夢をもった大人はカッコいいですね。
また、お二人の人柄が本当に素晴らしいと感じました。
モノが良ければ、ヒトは集まります。しかしお二人の場合は、ヒトが良いから、そこに多くのヒトが集まり、さらに良いモノづくりをされている。
そんな印象を持ちました。


サカイ産業株式会社
笑顔が素敵です!



サカイ産業株式会社―
創立100周年を迎えた後も、さらなる挑戦を続ける同社に今後も目が離せません。